遺産分割の取り扱い

遺産分割に関する取扱いの変更点

○特別受益の持戻しの免除推定規定

遺産分割に関する取扱いの主な変更点は2つあります。

一つ目は、「特別受益の持戻しの免除」についてです。新民法903条4項は、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である配偶者から他の一方に対して居住用不動産を遺贈又は贈与した場合に、特別受益の持戻しの免除の意思表示があったと推定する旨を規定しました。

これは、配偶者が死亡したことによって残された他方の配偶者の生活を保障する必要性が年々高まってきていることから、高齢化社会の要請に応えるべく、遺贈や贈与をした被相続人の意思を尊重した実務的取り扱いをすることができるようにするため設けられた制度です。この規定が置かれたことによって、生存配偶者は特別受益を持ち戻す計算をする必要がなくなるため、結果として旧法時よりも多くの相続財産を取得することができるようになりました。

 

(参考)新民法903条4項の具体例

例えば、被相続人をAとし、その配偶者をB、残りの相続人である子がCとDである場合について考えてみましょう。なお、Aにはこの他に相続人がいないものとします。この場合に、相続財産が預貯金1000万円であり、配偶者Bが被相続人Aから生前に居住用不動産(評価額500万円)の贈与を受けていたとします。

旧法下では、Bが取得することのできる相続財産額は以下のようになります。

(1000万円+500万円)×1/2-500万円=250万円

しかし新法において特別受益の持戻しが免除されると、Bが取得することのできる相続財産額は以下のようになります。

(1000万円+0円)×1/2-0円=500万円

 

○預貯金の仮払い制度の創設

二つ目は、「預貯金の仮払い制度」についてです。最高裁は平成28年12月19日に、預貯金債権が遺産分割の対象になる旨判示しました。この結果、金融機関は、一部の相続人のみからの請求による預貯金の払い戻し請求には応じられなくなってしまいました(最大決平28・12・19民集70巻8号2121頁)。

つまり、遺産分割がなされるまでは、相続人が各自の相続分に応じた権利を個別に行使するということが許されなくなったのです。そのため、被相続人の預貯金をもって葬儀費や生活費を支弁するような場合であってもいちいち相続人全員の同意を得なければならず、非常に不都合な事態が生じることとなってしまいました。これら不都合を解消すべく、新民法909条の2が創設されました。

 

(参考条文)

新民法903条

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けたものがあるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

4 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

 

新民法909条の2

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

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