配偶者居住権の新設

配偶者居住権(配偶者長期居住権)とは

配偶者居住権(配偶者長期居住権)は新法1028条に規定されています。これによると、被相続人の生存配偶者は、被相続人が所有していた建物に相続開始時居住していた場合で、

  1. 遺産分割で配偶者居住権を取得するとされたとき、及び
  2. 配偶者居住権が遺贈の目的とされたときには、その居住建物の全部について無償で使用収益することのできる権利を有するとされました。

これが「配偶者居住権」です。

配偶者居住権は賃借権類似の法定債権とされ、登記を対抗要件とすることにその特色があります。上述したとおり、配偶者居住権は、「相続開始の時に被相続人が所有していた建物に居住していた配偶者について、配偶者居住権を取得させる旨の遺産分割(協議・調停・審判)又は遺贈があったこと」をその成立要件としています。しかし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた時には、配偶者居住権は成立しません。

 

配偶者短期居住権とは

配偶者短期居住権は、新法1037条に規定されています。これによると、被相続人の配偶者は、相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していたことを要件として、配偶者短期居住権を取得するとされました。配偶者短期居住権は配偶者居住権と違って常に居住建物の全部について成立するわけではなく、居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にはその部分に限って成立します。

 

配偶者居住権(A)と配偶者短期居住権(B)の主な違い

①権利の法的性質

(A)賃借権類似の法定債権

(B)使用借権類似の法定債権(収益権がない)

 

②成立要件

(A)相続開始の時に、被相続人の財産に属した建物に居住していた配偶者について、配偶者居住権を取得させる旨の遺産分割又は遺贈があったこと

(B)相続開始の時に、被相続人の財産に属した建物に無償で居住していたこと

 

③対抗要件

(A)登記を第三者対抗要件とする

(B)第三者対抗要件はない

 

④存続期間

(A)原則として配偶者の終身の間。例外として、遺産分割等で別段の定めをした場合には、その定めに従う

(B)ⅰ)居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合は、遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6箇月を経過する日のいずれか遅い日

   ⅱ)ⅰ)に掲げる場合以外の場合は、居住建物取得者が配偶者短期居住権の消滅の申し入れをした日から6箇月を経過する日

 

⑤消滅事由

(A)ⅰ)居住建物の所有者が配偶者居住権の消滅請求権を行使したこと

   ⅱ)配偶者が死亡したこと

   ⅲ)建物が滅失したこと

(B)ⅰ)配偶者以外の相続人が短期配偶者居住権の消滅請求権を行使したこと

   ⅱ)配偶者が死亡したこと

   ⅲ)居住建物が滅失したこと

 

(参考条文)

新民法1028条(配偶者居住権)

被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。

一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。

二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。

 

新民法1037条(配偶者短期居住権)

配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第891条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。

一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6箇月を経過する日のいずれか遅い日

二 前号に掲げる場合以外の場合 第3項の申入れの日から6箇月を経過する日

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